これはむかしにあった話だと言われています。十二さいの羊飼いのルカは、二十ぴきのひつじを連れて、こおった湖の上を歩いて帰っていました。おじいさんのベラは言いました。「夜に湖をわたってはいけないよ。古い村があるところは、氷がうすいからね。」でも、子羊がにげて、もう夕方でした。
湖の真ん中で、こい霧がおりてきました。ルカには岸が見えません。氷がピシピシと鳴りはじめて、ひつじたちがなきました。そのとき、ルカはおじいさんのもうひとつの決まりを思い出しました。「道にまよったら、じっと立って、耳をすますんだよ。」ルカはじっと立ちました。遠くで、低いかねが鳴っていました。
音のほうへ歩くと、氷はじょうぶでした。岸では、古いかねが柱にさがっていましたが、だれもいませんでした。ベラがランタンを持って来ました。「わたしは鳴らしていないよ」と言いました。「だれも鳴らしていない。」