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Food

味がわからない料理人

The Chef Who Could Not Taste

C2 · Proficient · 2 min read

ルカは四十五歳の男で、十のテーブルがある小さなレストランを持っていて、赤字だった。その夜、料理ガイドの調査員が来ることになっていた。十年ぶりで、調査員がつける星で、レストランが続けられるかどうかが決まる。ところが木曜日の朝、ルカは鼻がつまって目がさめ、コーヒーのにおいがわからなかった。昼には、自分のスープの味もわからなくなっていた。塩もレモンもとうがらしも、みんな何の味もしない。まるで、だれかが世界の音量を下げてしまったようだった。

ベアは十五歳の女の子で、週末に鍋を洗っていて、いつもフライパンのにおいをかいでいた。ルカは困って言った。「これを味見して。」ベアはすぐに言った。「塩がたりないよ。それに、ソースがきつすぎる。」ルカは十代の子に直されるのが嫌だったが、午後ずっと、ベアに全部味見をさせた。スープ、焼き魚、リンゴのパイ。そのたびに、プライドをスプーンといっしょにのみこんだ。

八時に、灰色のレインコートを着た小さくて静かな男が四番のテーブルに座って、黙って次々に料理を食べた。最後に、料理人に会いたいと言った。「今日、ぼくは何も味がわかりませんでした」とルカは正直に言った。「今夜の食事は、皿洗いの子のおかげです。」調査員はほほえんだ。「知っています。台所のドアから見ましたから。耳を傾ける料理人は、味がわかる料理人よりめずらしいものです。」レストランは星をもらった。

日曜日、ルカの鼻は通った。スープを味見して、「レモンが多すぎる」と言った。「知ってる」とベアは言った。「そのほうが好きだって言ったでしょ。」スタッフの名簿では、ベアはもう「コックの助手」になっていた。

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